
草加市文化会館の実習室。ここで行われているのが、草加市シルバー人材センターの独自事業「旬の魚をさばく」です。
今回で41回目を迎えるこの教室は、2時間という限られた時間の中で、旬の魚を一尾まるごと捌き、盛り付けまで行う本格的な実践スタイルで人気を集めています。

この日の参加者は9名。何年も通い続けているベテランから初参加の方まで、それぞれのペースで魚と向き合います。活動は年4回、受講料は材料費込みで2,500円。令和2年3月の開始以来、コロナ禍という難しい時期を乗り越え、多くのリピーターに愛される場となりました。
魚は当日のお楽しみ。仕入れは講師自ら

講師を務めるのは、大手スーパーの水産部門で約40年のキャリアを積んだ吉田さん。
「海のない埼玉で、旬の魚をお造りにできるまで指導する」をモットーに、長年培った技術を惜しみなく伝えています。
この教室の面白いところは「当日まで何の魚をさばくか分からない」こと。吉田さん自ら市場やスーパーを何軒も回り、一番状態の良い旬の魚を買い付けています。新鮮さに加えて、家庭ではなかなか扱う機会のない魚が登場するのも魅力になっています。
この日に用意されたのは、以下の3種でした。
糸撚鯛(イトヨリダイ):表面を軽く炙り、豪華なお頭付きのお造りに。
真イワシ:基本の三枚おろしのあと、お造りに。
生イカ:鮮度を活かしたイカそうめんに。



軽やかな見本と、奥深い実践

まずは吉田さんがお手本を見せます。工程やコツを解説しながら、流れるような包丁さばきであっという間に見事なお造りを仕上げていきます。
続いて参加者の実践に移りますが、簡単そうに見えた工程もいざ自分で行うと思うようにいかない場面が多く、会場には時折、苦笑いがこぼれます。


吉田さんは全体を見渡しながら、質問の一つひとつに丁寧に対応。困っている参加者にはマンツーマンで手元を指導し、初参加の方でも最後には見栄えの良い一皿を完成させていました。
経験に応じた、それぞれの楽しみ方

参加者の経験値はさまざまです。何年も参加しているベテラン参加者の方は、吉田さんのお手伝いをしたり、難易度の高い工程に挑戦したりと、自分なりの楽しみ方を見つけています。


ベテランの方に、これまでで特に印象深かった魚を伺うと、「両手で抱えるほどの大きなブリ」とのこと。一人一匹ずつさばき、「家族だけでは食べきれず、ご近所にお裾分けしました」と、当時の思い出を楽しそうに語ってくれました。
「お金より、人との出会いが大切」


今回の糸撚鯛のような高級魚を含め、材料費込みで2,500円という受講料は破格です。実情を伺うと、会場費を除いた額のほとんどを材料費に充てており、吉田さんの指導は実質ボランティアなのだといいます。 近年の魚価高騰もあり、予算内で良い魚を仕入れる苦労や、直前までレシピが決まらない難しさもありますが、吉田さんは「だからこそ面白い」と前向きです。

「人との出会いや交流が一番大切。お金はあの世へは持っていけませんから」 そう笑う吉田さんは、プライベートでも週6日でジムに通い、休日はお孫さんとバスケットボールを楽しむなど、公私ともに周囲との交流を心から楽しんでいます。
「得意」が誰かの喜びに変わる場所

シルバー人材センターの仕事は、企業や行政からの依頼に会員が応募する形が一般的ですが、独自事業ではこの教室のように「自分の得意を活かして講師を務める」という働き方もあります。
「旬の魚をさばく」は、人と出会い、技術を磨き、旬を味わう。そんな豊かさが詰まった場所でした。
本教室はセンターの会員以外の方や、草加市外の方でも参加可能です。興味のある方は、草加市シルバー人材センターのInstagramをフォローして、次回の開催情報をチェックしてみてはいかがでしょうか。
シルボンヌK子














